院長コラム

2023.07.25

ピロリ菌と除菌治療について

ピロリ菌って何ですか?

ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で、1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルという医師によって発見されました。

胃には強い酸である胃酸があるため、通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌は『ウレアーゼ』という酵素を持っています。この酵素を利用してアンモニアを発生させ、胃酸から身を守っているため、胃の中で生きることができます。

ピロリ菌に感染すると、慢性活動性胃炎が起こり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんや悪性リンパ腫の1つである胃MALTリンパ腫などを引き起こすことがわかっています。

どうしてピロリ菌に感染するのですか?

実は、感染経路はまだはっきりとわかっていませんが、飲み水や食事など口を介した感染(経口感染)が大部分であると考えられています。

そのため、上下水道が十分完備されていなかった時代に生まれた世代の人はピロリ菌に感染している割合が高く、衛生環境が整ったことにより若い世代の感染率は低くなっています。

ピロリ菌の検査はどのようにするのですか?

ピロリ菌の検査法は、大きく分けて内視鏡(胃カメラ)検査を必要とする方法と、必要としない方法があり、全部で6つの方法があります。

内視鏡検査を必要とする方法

  • 培養法:ピロリ菌を培養します。
  • 迅速ウレアーゼ法:ピロリ菌がもつウレアーゼの働きで作られるアンモニアの有無を調べます。
  • 組織鏡検法:顕微鏡でピロリ菌がいるかどうかを調べます。

内視鏡検査を必要としない方法

  • 尿素呼気試験法:呼気を採取し、ピロリ菌がもつウレアーゼの働きで作られる二酸化炭素の量を調べます。
  • 抗体測定法:尿や血液のピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。
  • 抗原測定法:便中のピロリ菌抗原の有無を調べます。

どのように治療するのですか?

抗生物質(2種類)と胃酸を抑えるお薬(酸分泌抑制薬)を1週間服用します。初回治療(一次除菌)で除菌ができなかった場合は、お薬を変えて再治療(二次除菌)を行います。

新たに発売された酸分泌抑制薬を用いた除菌治療の成功率は、一次除菌・二次除菌ともに90%前後であり、二次除菌まででほとんどのピロリ菌感染症が除菌可能になりました。

当院では、二次除菌でも除菌が不成功になった場合の三次除菌療法(保険適応外)にも対応しています。

除菌ができたかどうかはどのように調べるのですか?

当院では、お薬を飲み終わって2か月以上たってから尿素呼気試験で除菌判定を行います。

お薬を飲み終わった直後ですと、除菌が不成功に終わっていてもピロリ菌の数自体が除菌治療により減っているため、ピロリ菌陰性=除菌成功と誤って判定されてしまうからです。

除菌が成功したら検査は必要ないですか?

一度除菌が成功したら、再発する確率は低く、ピロリ菌感染を繰り返し調べる必要はありません。ただし多くの胃がんは、ピロリ菌感染による胃炎によって引き起こされ、除菌後も胃炎はすぐには改善されません。また除菌により胃がんのリスクもゼロにはならないため、除菌後も定期的に内視鏡検査を受ける必要があります。

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