胃カメラ
胃カメラでピロリ菌は調べられる?検査方法と除菌治療の流れ
「ピロリ菌が気になるけど、どうやって調べるの?」「除菌したらもう安心?」——ピロリ菌は胃がんの最大の原因です。感染を早く見つけて除菌することが、胃がん予防のいちばんの近道になります。
この記事では、胃カメラでピロリ菌を調べる仕組み、除菌治療の具体的な流れ、そして「除菌後も検査が必要な理由」を、研究データとともにお伝えします。
ピロリ菌って何?なぜ胃がんの原因になるの?
ヘリコバクター・ピロリ菌(通称ピロリ菌)は、胃の中に棲みつく細菌です。胃酸という強い酸の中でも生き残れる特殊な菌で、一度感染すると治療しない限り何十年も胃の中に居続けます。
ピロリ菌がいると、胃の粘膜にじわじわと炎症が起き続けます。この炎症が長年続くと、胃の粘膜が薄くなり(萎縮性胃炎)、やがて胃がんが発生しやすい状態に変化していきます。
日本人の胃がんの大部分にピロリ菌が関わっているとされています。
胃カメラでピロリ菌を調べる方法
迅速ウレアーゼ試験——検査当日に結果がわかる
胃カメラ検査中にいちばん多く行われるピロリ菌検査です。カメラで胃の粘膜を少しだけ採取し、専用の試薬に入れます。ピロリ菌がいると、菌が出す酵素(ウレアーゼ)の働きで試薬の色が変わります。
結果は数十分〜数時間でわかるので、検査当日に「感染しているかどうか」がわかります。
組織鏡検法——顕微鏡で直接見る
採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の姿を直接確認する方法です。同時に、胃の粘膜がどの程度傷んでいるか(炎症の程度、萎縮の進み具合)も詳しく調べられます。結果が出るまでに約2週間かかります。
内視鏡での「見た目」による判断
経験豊富な内視鏡専門医は、胃の粘膜の見た目からピロリ菌感染の有無をかなりの精度で推測できます。感染した胃粘膜は特有の赤み、むくみ、白っぽい粘液の付着などが見られます。ただし、確定診断には必ず上記の検査を併用します。
胃カメラ以外の検査方法もある——でも胃カメラが最も効率的な理由
ピロリ菌を調べる方法は、胃カメラを使うもの以外にもいくつかあります。
- ・尿素呼気試験:薬を飲んで吐いた息を調べる方法。痛みもなく精度が高いため、除菌できたかどうかの確認にいちばんよく使われます。
- ・血液検査(抗体検査):血中のピロリ菌抗体を調べます。簡便ですが、除菌後も陽性が続くことがあり、「今感染しているか」の判断には不向きです。
- ・便中抗原検査:便中のピロリ菌抗原の有無を調べます。非侵襲的で精度も高い方法です。
これらの検査でもピロリ菌の有無は調べられます。しかし大事なポイントがあります。
除菌治療に健康保険を使うためには、「胃カメラで慢性胃炎の所見を確認すること」が条件になっています。つまり、血液検査や呼気検査でピロリ菌が見つかっても、結局は胃カメラを受ける必要が出てくるのです。
さらに、胃カメラでは「ピロリ菌がいるかどうか」だけでなく、「胃の粘膜がどの程度ダメージを受けているか」「すでに小さながんやポリープができていないか」まで同時にわかります。1回の検査で得られる情報量が圧倒的に多いため、最初から胃カメラで検査するのがいちばん効率的です。
除菌治療の流れ
ステップ1:一次除菌(7日間の服薬)
3種類の薬を1週間飲みます。胃酸を強力に抑える薬+抗菌薬2種類の組み合わせです。近年使われているボノプラザン(P-CAB)という薬を含む組み合わせでは、一次除菌の成功率が約90%に達するとの報告もあります。
服用中に下痢、味覚の変化、軽い腹痛などの副作用が出ることがありますが、いずれも一過性のものがほとんどです。自己判断で途中でやめてしまうと除菌が失敗するだけでなく、薬が効きにくい耐性菌を生むリスクもあるため、必ず最後まで飲み切ってください。
ステップ2:除菌できたかの確認(服薬終了から4〜8週間後)
薬を飲み終えてから4〜8週間後に、除菌が成功したかどうかを確認する検査を行います。一般的には「尿素呼気試験」が行われます。
ステップ3:二次除菌(一次除菌が不成功だった場合)
一次除菌でピロリ菌が残ってしまった場合は、薬の組み合わせを変えた「二次除菌」を行います。二次除菌の成功率は約90%以上と高く、二次除菌までは健康保険が適用されます。
除菌したらもう安心?——答えは「No」
ここが非常に大事なポイントです。「除菌に成功したから、もう胃がんの心配はない」と思いがちですが、残念ながらそうではありません。
2025年に発表された最新のメタアナリシス(11のランダム化比較試験を統合した分析)では、ピロリ菌の除菌により胃がんリスクは約36%低下すると報告されています。つまり、リスクは確実に下がりますが、ゼロにはなりません。
参考:Ford AC, et al. Gastroenterology. 2025; RR=0.64, 95%CI: 0.48-0.84.
特に注意が必要なのは、除菌前にすでに胃粘膜の萎縮が進行していた方です。萎縮した粘膜は除菌後も元に戻らず、そこから新たにがんが発生する可能性があります。
さらに、除菌後にできるがん(除菌後発見胃がん)は、色が周囲の粘膜と似ていたり形が平坦だったりして、見つけにくいことが知られています。通常の白色光の観察だけでは見逃しやすく、NBI(特殊な光で血管パターンを浮かび上がらせる技術)や拡大内視鏡による精密な観察が重要になります。
除菌後の方は、年に1回の胃カメラ検査を続けることが強く推奨されています。
よくある質問
Q. ピロリ菌はどうやって感染するの?
A. 主に乳幼児期に、家族(特に母親)からの経口感染と考えられています。上下水道が整備された現代の日本では、大人になってから新たに感染するリスクは低いとされています。
Q. ピロリ菌に感染していたら必ず胃がんになりますか?
A. いいえ。感染者のうち実際に胃がんを発症するのは数%程度です。ただし、非感染者と比べてリスクが5〜10倍高いのは事実なので、見つかったら除菌しておくことが胃がん予防の観点から重要です。
Q. 除菌治療中にお酒は飲んでもいいですか?
A. 控えてください。アルコールは除菌治療に使う薬の効果を弱める可能性があります。7日間だけですので、我慢していただくのが確実です。
Q. 子どもにピロリ菌がうつる可能性はありますか?
A. あります。ピロリ菌は家族内感染が多いため、ご自身が感染しているとわかったら、お子さんも将来的に検査を受けることを検討してください。ただし、お子さんの検査タイミングについては小児科医にご相談ください。
Q. 除菌後にまたピロリ菌に感染することはある?
A. 大人になってからの再感染率は非常に低い(年1%未満)とされています。除菌に成功すれば、再び感染することはほぼありません。
まとめ
ピロリ菌は胃がんの最大のリスク因子であり、感染がわかったら除菌治療を受けることが胃がん予防の最も効果的なステップです。胃カメラ検査であれば、ピロリ菌の検査と胃粘膜の状態チェックを一度に行えます。
ただし、除菌=ゴールではありません。除菌後もリスクはゼロにはならず、見つけにくいタイプのがんが発生する可能性があります。除菌後の方は年1回の胃カメラ検査を続けることが、ご自身の胃を守る最善の方法です。
